2017年9月、国土交通省は可搬式の「ナンバー読取装置」のデモンストレーションを省内で公開しました。
「ナンバー読取装置」の主な役割は、車検切れの車の発見です。調査目的で複数の場所に装置を設置したところ、多くの無車検車が発見されたようです。
ここでは、公道を走行している車検切れの車の割合、および同省と警察が協力して行っている無車検車の取り締まり強化などについて詳しく解説しています。
目次
車検切れの車の割合
平成26年、27年、28年の3年間にわたり、国土交通省は「ナンバー読取装置」を全国の11か所の公道に設置し、走行中の車の車検状況を定点観測しました。
定点観測の結果、公道を走行中の車の「0.27%」は無車検車であることが判明。1,000台中27台(調査対象のうち2,404台)が車検切れの状態で公道を走行している、という結果となりました(※1)。
なお、2021年12月末時点での日本の四輪車保有台数は約7845万3千台(※2)。単純に「0.27%」を乗じれば、全国の四輪車のうち実に21万台以上もの車が無車検の状態で公道を走行していることになります。
ただし、公道を走行していない車も含めたデータ上の無車検車は約510万台です。
※1:国土交通省「無車検車両の使用者に対し注意喚起を行っています。」
https://www.mlit.go.jp/common/001175846.pdf
※2:一般社団法人日本自動車工業会「四輪車」
https://www.jama.or.jp/statistics/facts/four_wheeled/index.html
「ナンバー読取装置」の仕組み
「ナンバー読取装置」は、次のような仕組みで無車検車の取り締まりに活用します。
1. 走行中の車のナンバーを自動で読み取り
公道に向けて「ナンバー読取装置」を設置し、走行中のすべての車のナンバーを自動で読み取ります。
2. 読み取ったナンバーを自動照合
読み取ったナンバーをPCのデータベース上で自動照合。
車検切れが発覚した場合には、国土交通省から警察官に該当車両の引き込みを依頼します。
3. 無車検車の走行ルートの先で警察官が待機
依頼を受けた警察が、無車検車の走行ルートの延長上(ナンバー読取装置から数十~数百メートル先)で待機し、該当車両を検査エリアへと誘導します。
4. 国土交通省から警告書を交付
警察官が自動車検査証(車検証)を確認し、車検切れであった場合には国土交通省へ連絡。
国土交通省から車の所有者に対し、警告書が交付されます。
車検切れ・自賠責保険切れの車で公道を走行した場合の罰則
車検切れした車で公道を走行した場合、道路運送車両法の無車検車運行に該当します。
また、車検切れした車は自賠責保険(強制保険)も切れていることが多いのですが、もし自賠責保険切れで公道を走行した場合、自動車損害賠償法の無保険運行に該当します。
いずれに該当した場合でも、車の所有者は行政処分と刑事処分が科されることになります。
以下、それぞれの処分内容について確認しましょう。
車検切れの車で公道を走行した場合の処分内容
- 行政処分:違反点数6点(前歴がない場合)・30日間の免許停止
- 刑事処分:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
これらの処分に加え、免許停止処分者講習(免停講習)を受けることがあります(受講は任意)。
自賠責保険切れの車で公道を走行した場合の処分内容
- 行政処分:違反点数6点(前歴がない場合)・30日の免許停止
- 刑事処分:1年以下の懲役または50万円以下の罰金
行政処分の内容は車検切れの場合と同じですが、刑事処分の内容は車検切れの場合よりも重くなります。
車検と自賠責が両方切れていた車で公道を走行した場合の処分内容
- 行政処分:違反点数6点(前歴がない場合)・90日間の免許停止
- 刑事処分:1年半以下の懲役または80万円以下の罰金
車検と自賠責保険の両方が切れていたとしても、違反点数が倍になるわけではありません。
ただし、免許停止日数と刑事処分は相当重くなる形となります。
車検切れの車で事故を起こすと過失割合に影響することがある
車検切れの車を運転中に事故を起こしたとしても、基本的に過失割合へ影響を及ぼすことはありません。ただし、車検切れの状態であることが事故に影響を及ぼしたと考えられる場合には、例外的に過失割合へ大きな影響を与えることがあります。
車検切れの車で事故を起こした際の過失割合について、以下で詳しく確認してみましょう。
交通事故における過失割合とは
交通事故における過失割合とは、「その事故の責任がどちらにどの程度あるのか」という比率を言います。
完全停止している車に追突する例などのように、回避のしようがない交通事故などを除き、過失割合が「100%:0%」になることはありません。大半の場合は「80%:20%」や「65%:35%」など、事故の当事者のそれぞれが一定の責任を負う形で結着します。
仮に加害者Aさんが「80%」の過失、被害者Bさんが「20%」の過失と認定された場合、車の修理代が合計100万円であればAさんは80万円を負担し、Bさんは20万円を負担する形となります(対人賠償は加害者が被害者に全額補償します)。
車検切れの車で過失割合に大きな影響を及ぼすケース
車検切れの車で交通事故を起こしたとしても、基本的には過失割合に影響を及ぼすことはありません。
過失割合は「その事故の責任がどちらにどの程度あるのか」だけを基準にした考え方であり、車検を受けているかどうかは基準に含まれていないからです。
ただし例外的に、車検切れであることが過失割合に大きな影響を及ぼすケースもあります。車検を受けていれば防げた交通事故のケースです。
例えば、車検では不合格とされるブレーキの不具合やタイヤの溝の減りなどが影響して交通事故が発生した場合。
その原因は車両の整備不良であり、車検を受けていれば防げた交通事故となります。
このようなケースの場合、交通事故の危険性を認識していながら車検を受けていなかったと判断され、過失割合に大きな影響を及ぼす可能性があるでしょう。
車検切れで事故を起こすと任意保険の補償対象外になることも
車検切れの車で交通事故を起こした場合でも、任意保険が有効期限内であれば、原則として任意保険の補償が行われることになります。
ただし、この補償はあくまでも「原則」であり、法律上の決まりではありません。車検切れの車が事故を起こした場合に補償するかどうかは、保険会社の方針や保険商品の種類によって違うと考えましょう。
たとえ車検切れの車で事故を起こした場合でも、基本的に「相手への被害」は補償対象となります。保険会社から「重大な過失」と認定されれば、「自分への被害」(人身傷害保険、搭乗者賠償保険、車両保険など)は補償されない可能性があります。
車検には交通事故を防ぐ目的があることも理解しておく
ブレーキの不具合やタイヤの溝の減りなどを原因とした交通事故は、決して少なくありません。
車検を受けていても同様の原因で事故となることはありますが、車検を受けていない場合には、より事故のリスクが高まると理解していいでしょう。
国が車検を義務づけている理由には、交通事故を未然に防ぐ目的もあります。ルールにしたがい、必ず期限内に車検を受けましょう。
車検が切れていることが分かった時の選択肢
仮に車検が切れていたとしても、その車で公道を走行しない限り、罰則を科されることはありません。
ただし、公道を走行できない車である以上は無用の長物です。それに対して毎年自動車税が課されることになりますので、車が車検切れであれば、何らかの具体的な対処をすべきです。
所有している車が車検切れと気づいた際には、以下4つの選択肢からご自身に合った対処法を検討してみるようオススメします。
車検工場やディーラーなどに相談してみる
なじみの車検工場やディーラーがあれば、早めに相談しましょう。
再車検を受けるべきか、それとも買取や廃車にすべきか等々、専門的な視点から所有者の状況に応じた適切な対処法を提案してくれることでしょう。
仮ナンバーを取得して自分で車検に出す
車検切れの車で公道を走行できませんが、市区町村の役場で仮ナンバーを取得すれば、制限付きで公道を走行することが可能となります。
仮ナンバーの有効期間中に車を車検工場に移動させれば、再度車検を通して車を使用できる状態にできます。
仮ナンバーで車検に出す時間がないという方は、業者に依頼して積載車で車を車検工場に運んでもらうという方法もあるでしょう。
ただし車検切れの車を積載車で運ぶことは問題ありませんが、レッカー車で運ぶと違法になる恐れがあるのでご注意ください(車検切れの車のタイヤが公道に接するため)。
廃車にする
将来的に乗る予定がまったくない車ならば、車をスクラップし、陸運局で廃車手続きをしましょう。
廃車手続きには「永久抹消登録」と「一時抹消登録」の2種類がありますが、スクラップする場合には「永久抹消登録」を行います。
廃車手続きの後、陸運局の敷地内にある自動車税事務所で税止めの手続きをすれば、以後は自動車税を納める必要がありません。
中古車買取店で買取してもらう
車検が切れていたとしても、まだ走行可能な車なら、中古車買取店が買取してくれる可能性が高いと言えます。
エンジンがかからない等の故障車・不動車であっても、修理して走行可能な状態になる車なら、積極的に買取している中古車買取店もあります。
買取金額は微々たるものかもしれませんが、数万円を要するスクラップ代を節約できると考えれば、買取も検討すべき選択肢の1つとなるでしょう。
さくら車検なら、車検切れでも無料で出張
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面倒な仮ナンバーの手配などもお客様にしていただく必要はありません。
万一、故障などで自走できないお車の場合には、積載車(有料)で引き取りに伺います。
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